平成生まれの寡黙OLが昭和アットホーム企業で働く

毎日皆でランチ―平成寡黙OL@昭和アットホーム企業

平成生まれの寡黙OLが昭和アットホーム企業で働く

毎日ランチをご馳走する社長

「よし、食事に行こ!」

毎日11時45頃になると、社長はそう言う。

私が入社した当日は、私を受け入れるためにわざわざみんなを誘ってくれたものだと思っていたのだが、全員に声を掛けてランチに行くのは昭和アットホーム企業の日課だったのである。

そして、そのお声は私にも掛かる。

本当にありがたいことだと思うが、私はここでは寡黙(でありたい)OLだ。職場と自宅が徒歩圏にあることもあり、お昼休憩は家に戻って昼食をとることにしているので、正直に「私は家で食べるので…」と断ることにした。

しかし、毎日誘っていただいて、毎日断るのもなかなかきついものがある。ここで、しかたなく”旦那”を発動することにした。

私の夫であるヒロは、私と同じく家から近い場所で働いているので、お昼は家で食べることにしている。つまり平日の昼食も夫婦で一緒に食べているのだ。

「夫も家に帰ってきてお昼ご飯を食べるんです。だから、私も家で食べます」

一人で食べているとなると、今日くらい一緒に食べようよ、と言われそうだが、家で食べることに”旦那”という理由をつけて説明すると、より理解が得られそうだと思ってのことだ。

本当は、夫が帰って来ない日もあるのだが、そんな日も決まって「夫と家で食べます」と伝えるようにした。

「そっかあ、残念。じゃあ、お先に行ってくるね」

ほとんどの場合そのように引き下がってくれるようになったので、誘いを断るという居心地の悪さは”旦那”のおかげで少し軽減した。

しかし、ある日こう言われたのである。

「毎日毎日、家に帰って旦那さんのためにご飯を作って、大変だね。嫌にならない?今日はサボって一緒に食べに行こうよ」

詳しく説明しなかった私が悪いのだが、説明がないとこういう解釈になるのか、と、一瞬ポカンとしてしまった。私は社長に、”昼食をとりに帰宅する夫の為に、自分も家に戻り、食事を用意する献身的な妻”だと思われていたのである。

実際のところは、休憩時間の開始が私よりも早い夫が、私よりも早く帰宅し、チンやら丼やらパスタやらを適当に作ってくれているところに、私が帰って来る、ということが常だ。

夫が用意してくれたごはんを食べながらちょっとした会話をし、お気に入りのマットレスで少し昼寝をして、先に休憩が終わる夫を送り出してから自分も職場に戻る、これがいつものパターンなのだ。完全に私のほうがラクをしている。社長は大きな誤解をしていた。

「ごはんは夫が作ってくれるんですよ」

そう言うと、社長は驚いた顔をした。

「そうなんだ!旦那さんすごいね、ボクなんて砂糖の場所もわからないよ」

これで料理担当が私でないということは伝わったのだが、私が”みんなでランチ”を避けたいと思っていることは、幸いとも言うべきか社長は知らないままなので、今も時々「すっぽかして今日は一緒にさ」と念を押されることがある。

しかし、すみません、と困った顔をすれば、「いいや悪いことじゃないよ、いいんだよ」と言って引き下がってくれるので、これはちょっとした罪悪感を拭ってくれる素敵な対応だと思っている。

そしてときどき、「ボクらみたいな歳になると、旦那なんて稼いでくれればあとはどうでもいいみたいな感じだからさ、うらやましいよ」なんて言葉が続くこともある。

深い意味はないのだろうが、社長は家にいるよりも会社にいる方が楽しくて、こうしてランチの招集をかけるのかもしれない。

入社して10ヶ月が経つ今も、昼前になると、社長から少し楽しそうにランチに誘われる。

「エモトさん、今日は旦那さん、家にいるの?」

締めの宣伝

ここから下は昭和アットホーム企業の寡黙OLが、”めおとロックバンド”ヌレセパの饒舌歌担当に変身する時間だ。今回もがっつり宣伝させていただきたいと思う。

今回紹介するのはMVごっこナンバー003、『引っ越しラプソディー』。ちなみに私は動画担当でもあるのだが、3作目にしてよくもこんな動画を作れたものだと思う。寡黙IT企業時代、暇だったゴールデンウイークを潰して制作した懇親の一作だ。

引っ越しの時期はもう過ぎてしまったかもしれないが、あの物件探しから新しい部屋に移り住むまでの期間には、何度でも味わいたいほどキラキラとした他にはない高揚感がある。そんな瞬間を歌ったこの曲は、テンションを上げたい時にぜひ聴いてほしい。