平成生まれの寡黙OLが昭和アットホーム企業で働く

【最終回?】ランチ行けず、高級焼肉弁当を配布―平成寡黙OL@昭和アットホーム企業

平成生まれの寡黙OLが昭和アットホーム企業で働く

割としっかり密を回避

「エモトさんこの日来るでしょう?6,000円の焼肉弁当食べない?」

緊急事態宣言が出てから2週間、ローテーション勤務をしているためにスカスカな状態のフロアで、副社長からのお誘いはクリアに耳に入ってきた。蜜さんが楽しそうに続ける。

「社長が奢ってくれるって!昨日いた人たちではね、2,500円のお弁当を食べたんだけど。30日はエモトさんもいるから、6,000円のにしようって言ってるの」

いつかの記事で紹介したように、昭和アットホーム企業では毎日お昼前になると、社長が皆を引き連れてランチを食べに行っていた。しかし近頃は3蜜を避け、お弁当を買ってきて、窓を開け放った社内のデスクで食べているらしい(…らしい、という表現でお分かりのように、私は相変わらず徒歩圏の自宅に帰って食事をとっている)。

出社日を極力削減して職場を回しているので、私含むいつものメンバー6人中の、2~3人しか出社しない毎日が続いている。月末は業務が多いため珍しく5人が出社予定なので、そこを狙った計画なのだろう。

「だからさ、その日は家に帰らないで、ここでエモトさんも食べようよ」

「なかなか自分じゃ手を出せないよね、6,000円なんて!」

この日は私以外に副社長と蜜さんしかいなかった。なんだか二人だけで盛り上がっているようにも見えるが、社長も乗り気なのだろうか。6,000円あれば100円マックが54個食べられる。サイゼリヤで二人で豪遊できる。安い居酒屋でたくさん飲める。そんな金額の焼肉弁当…どんなだろう。

こういう風に、事前にランチのアポが取られることは前にもあった。前回は確か、年末に近所のちょっとお高い天ぷら屋さんを予約するからエモトさんも一緒に、というお誘いで、その時も支払いは社長もちだった。

一般庶民(しかもちょっとケチなほう)の私には、社長という役職の人の金銭感覚がわからないけれど、社員や身近な人に、楽しいとか美味しいとかいう思いを定期的にさせてあげたい…みたいな試みなのだろうか。

「じゃあ、せっかくなのでそうします」

私が30日のお誘いを承諾すると、副社長と蜜さんはすごくうれしそうな顔をした。実は、副社長は蜜さんの次に好ましく思っている登場人物だ。二人が楽しそうなので、私の気分も少し上を向いた。


「おれしじみにしようかな。蜜ちゃんは、あおさ?」

当日、昼前の時間になると、社長が「食事に行こう」の代わりにみそ汁の具を聞いて回っていた。焼肉弁当を注文してはいるが、それとは別にカップの味噌汁もご馳走してくれるらしい。

「なめこにします、私買ってきますよ。エモトさん何がいい?とうふとか、豚汁もあるよ」

蜜さんは私からも回答を得ると、その場にいない人の具は何にしよう~、と言いながら去っていった。

ゴールデンウィーク期間であるうえに、外出自粛のためレストランでの外食が出来ないからか、お店が相当忙しいらしく、焼肉弁当は予定の時間を過ぎてもなかなか運ばれて来なかった。

「いつだったかなぁ~、藤森クンが注文した弁当が来なかったことがあってさ、20人分!あの時は焦ったよなあ~」

「あれはお店が忘れてたんですよ、ボク悪くないです。っていうかもう10年以上前の話じゃないですか!」

昭和アットホーム企業には、仕事の内容以外にも社員の間で共有されている記憶が多い。長く勤めているということもあるのだろうが、ここに来て2年ほどの柴田さんに対しても、”これ懐かしいよね、一時期はさぁ~”というような絡み方をしているのを見ることがある。

彼らにとっての職場のメンバーは、”毎日おしゃべりを交わすくらい仲の良いクラスメイト”のような感覚なのだろう。そしてそこに私のことも含めていてくれているようだが、私は気が合わないので図書室で本を読んでいたいと思っている。

ここで、仲良くすること…例えば一緒にご飯を食べることなどを強要されてしまっては困るが、そうでないのがこの昭和アットホーム企業の良いところだ。陰でどう言われているかは知らないが、表立って嫌われているような空気はない。

話が逸れたが、結局焼肉弁当は12時40分に到着した。ぜひ一緒にと言われたくらいだからそれなりの会話でも発生するのかと思っていたが、ウイルス対策を意識してのことなのか、「おいしいね」などと一言二言交わしたのみで、皆静かに味わって食べていた。私からすれば、本当に、ただ、おいしい焼肉弁当を食べさせてもらっただけ。まあまあな得をした気分になった。

ふいに副社長が、ふざけたように、弁当と一緒にビニール袋に入れられていたチラシを私のデスクに置いた。私は、手元にある弁当に書いてある名前を、チラシの中に探してしまった。

『特上カルビ弁当―2,500円』

6,000円の焼肉弁当は、さすがに社長に却下されたらしかった。

終わり・・・かも、という話

東京都を含む地域に『緊急事態宣言』が出されてから、昭和アットホーム企業も奮闘を続けている。

駐車場を確保して車通勤を、電車通勤の人には時差出勤を推奨して他人との接触の機会を減らし、また出社日を極力減らすことで社員同士の接触の機会も抑えている。

今日も、私が属する課には副社長と蜜さんと私しか出社しなかった。つまり、この記事によく登場している社長・藤森さん・柴田さんがいないのだ。私も週1~2回の出勤となっているし、もうずっと、ぜひ記事にしたいと思うような出来事は起こっていない。スカスカで、しんとしたフロアに、加湿器のトポットポッという音が漂っている。もはやこの場所は、このブログを始めるときに定義した昭和アットホーム企業ではない。

しかし、この静かな場所の過ごしやすいことと言ったら!!!耳を塞ぎたくなる雑音を聞くことがない。突然の笑えない絡みに顔を歪ませる必要もない。昭和アットホーム感の根源は”密”にあったのかもしれない。

ところで、この平成寡黙ブログを始めようと思ったときの私は、この先ももうちょっと長いこと、この昭和アットホーム企業で働いていくつもりだった。…だったのだが、事情が変わり、5月末での退職を決めた。

その理由についてここに記載するのは趣旨が違うので割愛するが、とにかく私は6月以降、もうこの昭和アットホーム企業に来ることはないのだ。そして、本日の話し合いで、私の5月の出勤日は4日間に決まった。つまり、私が自粛前の昭和アットホームな環境に身を置くことは、もう無い。

4月頭から始めて1週間に3回の更新を続けてきたこのブログだが、前回以降、その記録は途絶えた。過去の面白かった出来事も書ききってしまったし、上記の理由で新しい事件も入荷が見込めないのだ。残念ながら、この企画は今回で終了ということになると思う。MVごっこを紹介し切るまでは続けたいと思っていたが、仕方がない。

最後の最後には寡黙OLを突き破って、色々突っ込んで質問してみるのもアリかなと~思ったりしていたのだが、このご時世なので、退職しても送迎会は執り行われないはずだ。ブログ的には残念だが、気持ち的にはホッとしている。

寡黙OL生活はあと2週間強続くので、もし何かあったときには、また記事にしてみようと思う。

締めの宣伝

もはやここまでか…。とはいえ順当に紹介していこう、業務中は寡黙OLキャラで通している私エモトモエが歌担当として活動している”めおとロックバンド”ヌレセパのMVごっこを。

今回紹介するのは㎹ごっこナンバー014『マンネリズム』。退屈なようで実は甘々な恋愛を可愛く歌う王道ポップスだ。動画もなかなか頑張っている。キュンキュンしたいときに聴いてほしい。